///『コードネーム U.N.C.L.E.』感想、という名のイリヤ×ギャビー萌え語り

『コードネーム U.N.C.L.E.』感想、という名のイリヤ×ギャビー萌え語り

ブリュッセル行きの飛行機で見ました~。

往路に期待せずに見て「こ・れ・は」と思い、旅行中、夜寝る前にいろいろなシーンや台詞が頭に浮かぶほど印象に残ったので、復路に二回、見てしまいました。字幕、吹き替え、合計三回。ソロが本当にヴィクトリアのネックレスを盗んでいるかどうか確かめるために、しつこく巻き戻ししましたよ!

舞台は1963年、核弾道がナチスの残党の手に渡るのを防ぐため、アメリカとソ連が手を組むという話。

派遣されるスパイの相性が最悪で、アメリカ人のナポレオン・ソロは二枚目のプレイボーイ、ロシア人のイリヤ・クリヤキンは生真面目だけどカッとなりやすい性格。
これに、小悪魔系女子とガチで悪魔な美女がからみ、方向性は違うけど『007 スペクター』より完成度が高くなってます。

無駄のない、スピーディーな展開。派手すぎず、スリリングなアクション。
最初から最後まで一分の隙もないお洒落感。
レトロな豪華さに満ちた……ギャグ映画です。
しかし、イリヤ×ギャビーの恋愛未満(?)の関係がかなり心に残ってしまうのは私だけでしょうか(そうじゃないと信じる!)

キャラクターの内面の描き方

基本的には、キャラクター映画だと思います。

ソロ、イリヤ、ギャビー、ヴィクトリア、ウェーバリー、全員すごくキャラが立ってますから。キャストも完璧。合っていない俳優というのが一人もいません。一番ぴったりなのは……個人的にはエリザベス・デビッキ!? アリシア・ヴィキャンデルも可愛かった。

ガイ・リッチー監督のキャラクターの描き方が、私、かなり好きです。

たとえば、『シャーロック・ホームズ2 シャドウ・ゲーム』のラスト。

シャーロックがモリアーティ教授といっしょに滝壺に落ちる場面、コナン・ドイルの原作では、争った末に足をすべらせて……というような単純な扱いですが、『シャドウ・ゲーム』では、シャーロックがそうせざるをえなかった理由がよく分かるように出来ています。台詞があるわけじゃないですが、ジョンのためにはどうしても教授を抹殺しなければならず、そのための手段があれしかなかった、彼の脳みその超高性能シミュレーターをもってしても、自分を犠牲にする以外の解がなかった、ということなんです。
だから、滝壺に落ちていくとき、モリアーティは恐慌状態の顔つきなのに、シャーロックはやることをやったという眠るように安らかな表情をしているんですよ。こういうのに、グッとくるんだよ!

と、まあ、話は大きくそれましたが、こうした、分かりにくいようで、分かりやすい、キャラクターの内面の描き方が好きなんです。

今回も、イリヤ×ギャビーは結果的には何もしてないんですが、そのほうが色気があっていいよねと。行為を描くよりも、見る側のエモーショナルな部分を喚起するでしょと。プレイボーイのソロにも、直接的なセックスシーンはないのですが、そういうのは他の映画で見てるので、なくてもいいですと。

最後の一瞬、ソロの葛藤の描かれ方もよかったです。

ということで、以下、徹底して、イリヤ×ギャビー萌え語りになります。各シーン詳しく考察しているので、基本的にネタバレです。未視聴の方は引き返してね。

(シーンの番号は適当ですよー)

シーン①

東ベルリンの車の整備工場で働いているギャビーのもとに、高級スーツを着た伊達男ソロが乗り込んでくる。行方不明の核物理学者のお父さんを探し出すため、彼女を西ドイツに連れ出そうとする。しかも、この会話はKGBが盗聴しているので、選択の余地はないというわけ。

テンポよく、物語冒頭のカーチェイス。

カーチェイスといっても、ただスピードを出すのではなく、ワルツのような二台の車の動き(CMっぽい)。古い東独の街で「奴がハンドルに置いているのは片手だけか?」「銃声のような音が聞こえたら車を出せ」という静かで緊迫したやりとり。キーコキーコと車のウィンドウを手動で開けるレトロさが素敵です。

この時、隣の車から、チラッと視線を交わすのが、まぁ、二人の初対面ですね。「こっちを見ているか?」「ええ」で、一瞬うつむいたギャビーの微笑みに、すでに小悪魔系の実力が表れてます。

ギャビーが素晴らしいドライビング・テクニックを見せつけるものの、イリヤも間違えずに追ってくる。ソロが一人で車を降りて撃つ最初のキメシーン、顔半分にライトが当たっていてちょっと絵のような……このとき車のなかでは仰向けに身を横たえたイリヤがじっとしてますが、これも光の加減がすばらしい一瞬です。指を銃身に当てながら宙を睨んでいる目が青い。

お返しにソロたちの車のタイヤをぶち抜き、疾走してきて、素手で車を止めようとするイリヤ。ギャビーが焦って「銃で撃ったら?」というと、ソロは「撃つのは卑怯な気がするな」
ソロはCIAのエージェントですが、美術品窃盗の前科があり、刑期と引き換えに働いているだけあって、CIAになりきっていない、自分なりの考え方をする男なんですね。

ソロの写真を逆さまに映しているシーン、「失礼、同志」のあれが、ベッカムだったのね!
西側に逃げ切った後、ソロがエプロンをつけて皿を洗っているチーズを削っている。その家庭的な画(え)には何の意味が。

シーン②

アメリカとソ連が組むことが決まり(予告編にある「初日から相棒を殺すな」)、公園のカフェテラスで「後は若い人同士で……」と、まるっきりお見合い状態。イリヤがテーブルをひっくり返したりして、その後、ローマに潜入するためギャビーの衣装を選んでいるシーン。

「俺の女はこんな恰好しない」と、言いたい放題で現れるイリヤに、「どうして彼がここに?」「(潜入するうえでの役柄は)君の婚約者だ」「やってられない」と、憤慨して店を飛び出すギャビー。口の上手いソロが言いくるめますが、イリヤは勝手に洋服を選び始めています。

「ソビエトの建築家は婚約者にあんな服は着せない」「その服とベルトじゃ合わないだろう」などと二人でやり合いながらも、しかし、再び試着室から出てきたギャビーは、直前の大きな金のイヤリングとネックレスをジャラッとつけたスタイル(確かに老けて見える)より、はるかに垢抜けて可愛いので、ソロも沈黙。

ソロを追い払った後、イリヤが「悪くない」とつぶやきながら、ギャビーの体をくるっと回してますが、多分これが最初のスキンシップ。しかし、あれ? 彼女も別に抵抗してません。「一つ足りないものがある」と、婚約指輪を渡されますが、それを握って、相手の胸をトンッと叩くあたり、そんなに嫌がっているようでもなく、おいおい、さっき店を出て行ったときの権幕はどうした? ちょっと甘えているようにも見えなくもないです。女心は複雑だよ。

カフェ中の人間が一斉に席を立って出ていく演出、『シャドウ・ゲーム』にもありました。
ピンヒールをはいたギャビーが「よっこいしょ」と立ち上がるしぐさがおかしい。車の整備工だから、普段はガテン系の服なんだろうな。
イリヤ、ある意味、見直したよ。生・真・面・目でも、女ものの洋服は選べるんだ。
まあ、10歳くらいまではソ連の上流階級で育っているはずなので見る目はこえているのか。その後、ラーゲリ(強制収容所)で何があってメンヘラになったのかは聞いてはいけない。

シーン③

ローマの街をそぞろ歩きするイリヤとギャビー。有名なスペイン広場で、「ソビエトの建築家さんならこの階段の予習もしてきたはずよね」と、ギャビーが水を向けるや、珍妙な会話が始まる。

「実はロシア人がつくった」「セルゲイは建設中に亡くなった母の齢を段の数にした」「百三十五歳で亡くなったの?」「違う。百歳だった。セルゲイは三十五歳」「ふーん、六十五歳のときの息子なの?」

答えに詰まっているところにソロがクリーム色のスクーターに乗って登場、「男が二人、つけてきている」と忠告。「知ってる。一人で対処できる」「対処? ちゃんと財布を渡して怖がれよ。ソビエトの建築家は戦う訓練は受けていない」

さて、二人組の強盗にからまれてイリヤは財布を出すものの、父親の形見の時計まで持っていかれて、キレる寸前。手がぶるぶる震えて、あやうく乱闘が始まりそうなところで、ギャビーが両手を強くつかんで押さえ、事なきを得ます。ソロとやり合っていると(「ソビエトの建築家なら戦うはずだし、スパイだったら殺してる」)、ギャビーが「あたしはあんたたちの母親? そんなことなら降りる」と一喝。ほっそり小柄な美人なのに、中身は肝っ玉母ちゃんみたいで素敵です。

ソロがチェックインする前の客は、ウェーバリー。そういえば、ギャビーもホテル内の部屋に電話をかけていた。
全視聴者が「このロシア人、大丈夫か」と思った、スペイン広場の会話。潜入捜査に向いてなさそうだ(ジョークだとしてもあまりに。この後、ギャビーの叔父に「重量挙げ選手みたいな体格だ」と言われて、「ジョギングが趣味です」と、とんちんかんな受け答えをするシーンもある)。
ソロの乗ってるスクーターが可愛い。ギャビーは有名な「船の噴水」で水を飲んでました。

シーン④

③の直後、ホテルの豪華な部屋で。二人共、それぞれの女性相手に楽しんで(?)います。

ソロは、007ですね、ホテルの受付嬢と。断られかけてもまったく顔色を変えない色男。

イリヤとギャビーの部屋は、二人の仲が進展した、重要かつ、甘いシーンになってます。一見してそんなことないのが面白いんだけど。

「(強盗に財布を取られて)ええ、大丈夫よ、叔父さん。イリヤは震えてるわ。喧嘩は苦手なの」と電話しているギャビー。イリヤはチェス中(エンドロールでチェスの腕前が何とかって出てきましたが、よく分からなかったです)。ギャビーがお酒を飲み出しますが、イリヤはまったく付き合わない。「それ(チェス)って面白いの?」と言い捨てて隣の部屋に消えた彼女が、突然、大音響で音楽をかけて踊り出す……。

イリヤからすると完全に意味不明ですが(チェスに集中できなくていらいらしてる)、この女の子の行動は、素直に解釈して、「かまってほしい」だと。初めての任務で、実のお父さんの消息も気になるし、彼女は不安で、緊張していて、一緒にお酒を飲んで、話し相手になってくれる人が欲しかったんじゃないかと思います。ソロならすぐ気づいたのに(そして、多分、寝技に持ち込んだ)。ロシア人はあくまで鈍感なので、いやがらせ作戦に出たんですね。

「一緒に踊りたい」と両腕をつかみ、音楽に乗って踊ると見せかけて、相手の頬をビシッバシッと平手打ち。「調子に乗るなよ。押さえつけるぞ」「ベッドに?」「(焦った声で)違う」

でも、イリヤも本当に嫌がっているわけではなくて、彼女に腕をつかまれると微笑んでます。

アメリカ人は他人に敵意がないことを見せるためにいつも微笑んでいる一方、ロシア人は誰彼かまわず笑ってみせると「軽薄な奴」と思われるので、本当に親しい相手にしか笑顔は見せない、と、どこかで読んだことがあります。それでいうと、イリヤが微笑むのはここと、あと二、三回しかなくて、全部ギャビーの前なんです。分かりやすすぎる、ロシア人。

めげないギャビーは「レスリングしましょ」と、いきなり男にタックルして、二人で床をごろごろと転がってます。まったく訳が分からない感じがしますが、女として想像するに、生理的にNGな男の腕をわざわざつかんだり、床を重なり合って転がったりすることって、ないと思うんです。まず、絶対に! だから、これも一種の「かまってほしい」なのですが、身体言語的にはより進んで、「あなたに触りたい」くらいのメッセージじゃないのかと。

しかも、女性の側から、積極的にこういう行動に出るということは……(お酒も入ってるけど)

じーっとにらみ合った末、ギャビーがイリヤの上に倒れ込んで寝てしまうシーン、これまた何も起こっていないようで、内面的にはいろんなことが起こっているようで、萌え心を刺激します。

ゆっくりパジャマの背中に移動していく手の動きとか……お互いの頬が触れるようにして、彼女が床に突っ伏す瞬間、ほとんどうっとりした表情を浮かべるイリヤが見もの。きっと、女の子のすごくいい匂いがしたんでしょうね。ベッドに運ぶとき横抱きではなく、リュックサックを前にしょってるみたいな運び方なのが、色気がなくてよかったです。「おやすみ、整備士の娘」 この人は貴族の娘より労働者の娘が好きそうな感じがします。眠りながらも、男の手を掴んで離さないというのも、明確なメッセージじゃないでしょうか。

↑この動画はちょっと省略されてるようですが~

このシーン、いろいろなバージョンを考えて、いちばん「表面的には意味(色気)がなさそうで、実は意味(色気)がある」ものを選んだような気がします。

シーン⑤

④の翌朝、車の前で。
「昨日はなかなかよかった。強い女は好きだ。任務のためにも、もっと仲良くなろう」
と、方針転換のイリヤ。そりゃ、あの恍惚とした表情を見れば、言葉や理性がどう言おうが、無意識的(身体的)なレベルではもう落ちてるんだろうと思いますが。

ギャビーはつんとしてます。白い帽子が美しい。

両手に新しい婚約指輪を握って(どっちかな?)して、新しい婚約指輪をはめようとすると、ギャビーが「ブレーキかけてよ、ロシア人さん」と言い出す。ん? 普通は、イリヤが言ったように「君の婚約者は朝早く起きて、新しい婚約指輪を買ってきた」、つまり、任務のために婚約者を演じればこういう行動になるはずで、そんなに自意識過剰になる必要ないんじゃないかな、ギャビー?

この早朝、ソロがロシア製の盗聴器を返しにやってきている。そして、(ボウタイが)服に合わない」と言われたので、車の前のイリヤはネクタイ姿になっている。

シーン⑥

ヴィンチグエラ家のパーティで、イリヤはギャビーの叔父さんから侮辱を受けたせいか、昨晩強盗相手に暴れられなかったせいか、傲慢なイタリア貴族たちを叩きのめす。男子トイレの扉をパタン、と閉めて……きっと、一瞬で片がついたんだろうね。

ホテルに帰ってきて、ソロ「赤の脅威は?」ギャビー「トイレに三十分こもりきり(これは、写真現像中のため)」「リッピ伯爵は入院したぞ」と言われても、「あいつらが悪い」と扉の向こうから怒鳴り返すので、視聴者はますます「こいつ、潜入捜査には全然向いてないな」と思うのでした。

女漁りが趣味なアレグザンダーにギャビーが言い寄られていたのを、「あいつはナチだ」とののしり、「なんで怒るの。婚約者じゃないのに」と返されると、バタンとドアが開いて、「任務上は婚約者だ。だから君をあいつに奪わせない」とむきになるのは生真面目なのか、何なのか。

イリヤが受けた侮辱、実はよく分からなかった。台詞が遠回しすぎて。
このパーティで、ソロが招待状をすり取った相手はウェーバリー。というより、ウェーバリーのほうが地位もあり、信頼されていて、どう見ても、米ソ二人よりはるかに上手く潜入してます。
ソロは伯爵夫人の腕輪は外しているが、ヴィクトリアのネックレスは盗っていないように見える。時計については分からない。テーブルクロスはお見事!

シーン⑦

⑥の同じ晩。ソロとイリヤが単独で、いや、現地ではちあわせして合流し、研究所に忍び込みますが、お互いに張り合いながら、ギャグの連続。なんとかカッター、巨大金庫の扉……父の時計や、ソロが盗んだ食事(目の前でイリヤのボートが行ったり来たりしている。爆笑のシーン)の後、しぶしぶイリヤを助けるところは、きちんと伏線になっています。

金庫を破ったのはソロでは、と、女の勘を働かせたヴィクトリアが不意打ちでホテルの部屋を訪れる。間一髪、間に合ったソロが、黒いガウンに歯ブラシをくわえた姿で登場。わざとびっくりした顔もチャーミング。そして、沈黙の後「ブドウは?」……ブドウ!? 鳩が豆鉄砲を食らったようなヴィクトリアの顔がおかしくて! はたから見れば、深夜いきなり男の部屋に押しかけた、その気のある女にしか見えないですもんね。
下の階ではイリヤたちが盗聴していて、始まったあえぎ声に脱力してます。

シーン⑧

⑦の翌朝。
「ヴィクトリアは信じたと思うか?」「全力を尽くした」 そうですか、全力を尽くしたんですね。

昨晩、ソロとイリヤが出かけている間に、ギャビーの叔父さんから二人きりでランチをしよう、正午に迎えの車をやる、と電話がかかってきていた。「エサにかかった」

イリヤがうろうろしながら「殺されるかもしれない」と心配している。「父親の情報が分かるかもしれないんだ、しかたない」と、追跡装置をいじりながらソロ。でも、ロシア人があんまり気にしているので、「惚れたのか?」と。答えはもちろん「何を言ってるんだ?」

一度目に視聴したときは、唐突だなー、と思ったのですが、二度目によく考えてみると、ソロは正しい。確かに④が終わった段階で、意識しているかどうかはともかく、二人の間はそうなっていたのです。さすがは病的なプレイボーイ。

オレンジ色のミニのワンピース姿でギャビーが登場。
「追跡信号が出ていないぞ、スイッチは入れたのか」というソロに、「多分、入れた。確かめてみる?」とテーブルにだんと乗って美しい脚を見せるのは、挑発ですよね。スイッチ、本当に入れたのか? ソロは「ゆずってやる」と言うんですが、「そちらの機械だ」とあわてるロシア人。それでも男女の仲にかけては常に正しい洞察をするソロは「バルコニーに出ている」と気をきかせ(何というグッジョブ)、すると、イリヤが猛烈な勢いで手をこすり始めるので、視聴者は(何してんだ、こいつ)と思うわけですが、彼女の脚に触れるために手を温めていたのですね。「……っ、まだ冷たい」とか無駄にドキドキします。いや、単にスイッチを入れているだけなんだけど。でも、太ももを触らせるってすごく官能的じゃないですか? しかも、生真面目なので(違う)丁寧にやってるみたいですしね。「間違えないように……」とか言っちゃって。
テーブルに乗ると二人の体格差がよく分かります。

脚に触れて「震えてる」「それは、怖いからよ」このとき彼女を見上げたイリヤの顔が、いかにも嘘偽りないというか、こんなに感情が顔に出てスパイとして大丈夫なのか、と、他人事ながら心配になる表情で。「ずっと様子を見ている。心配ない」、でも、このときギャビーは先の展開を知っているわけで、この表情を目にして嬉しくもあり、複雑でもあっただろうなと。あっ、そうか、だから罪滅ぼしに……ソロがまたグッジョブで帰ってきてキスは未遂に終わります。任務の前にそういうの、よくない。(棒読み)

シーン⑨

ヴィンチグエラ家のランチで、ギャビーの裏切り発生。時系列が前後して衝撃を与える構成になっている。

ここのソロ、ヴィクトリアのやりとりも好きです。ソロが自分で枕をポンポンって用意して横たわるのもおかしいし、ソファの背もたれの上に寝そべるヴィクトリアも絵のように美しく。
「母だけが、その名で呼ぶ……」
ソロの生い立ちって? 何となく、あまり裕福でないような気もするけど(だからこそ高価な美術品や贅沢に執着するような)

「私の婚約者はKGBで、あなたの奥さんの不倫相手はCIAよ」
この瞬間、愕然として双眼鏡を取り落とすイリヤの表情に笑った。

シーン⑩

電気ショックでなぶり殺しにあう寸前、イリヤが借りを返しにきて救われるソロ。「自分でも意外だが、おまえの顔を見てうれしいよ」。しっ、と口に指をあてるイリヤは、茶色のジャンパーに帽子というダサいソ連男子スタイルに戻ってます。

ここは、恐怖からギャグへの振れ幅が非常に大きい場面です。もう、何て言ったらいいのか……とにかく笑えるし、結果的にはよかったと思います(CIAにはMKウルトラという身の毛もよだつ洗脳実験の実話がありますよね)

ところで、イリヤは怒ってます。「彼女は裏切った」と言われると、カッとなって電気ショックのペダルを踏む。接続が壊れると、律儀に「おれが修理する」とまで。ソロは「おれも騙された。しかたがない」と、わりと淡々となぐさめますが、イリヤは「おれは悔しい」と。

シーン⑪

ギャビーは父との再会、核弾道を無効化しようとする。ヴィクトリアの悪魔の笑みが最高。

男二人は「連絡がついた。ヘリを用意してくれる」と、行ってみると、ウェーバリーがにこにこして待ってます。この人、ヒュー・グラントだからだけど、タレ目でいつも笑っているように見えるんですよね。ナイスキャスティング。

イギリス情報部は、二年も前にギャビーに接触し、機会をうかがっていたのに、米ソが騒々しくやって来たので、「すべてが水の泡になったかと思った」。しかし、米ソを裏切ることで相手の懐に入り込む作戦に出たのでした。
「明朝八時、ナチスの残党に渡される核弾道を奪回してほしい。えー、それに、できれば私の部下も救出してほしい」「部下?」ソロはギャビーがイギリスのスパイだったことにすぐ気づき、納得しますが、イリヤはまだ怒ってます。そこで、「並のスパイなら逃げられる。それに君は並以上のスパイだろ」と、相手を持ち上げる老獪なイギリス人。

「彼女に俺たちを裏切らせ、今度は俺たちに彼女を救わせるわけか」「それはあまりいい要約じゃないが、まあ、そんなところだ」、ウェーバリーのこのセリフ、応用がききそうです。

「これってつまり、アメリカとソ連が張り合って、イギリスがその一段上を行く、みたいな映画ですよね」
「あまりいい要約とは言えないが、まあ、そんなところだ」

「君たちも彼女が好きだから、救えてうれしいだろ?」と、何もかも計算済みのイギリス人。
しかも、イリヤが驚いたことに(「スパイのくせに間抜けな質問だな、クリヤキン」)、地中海に空母を呼んでいるんですが、実際、もしヘリだけだったら、歯が立たなかったはずなので、このナイスミドルの用意周到さには驚きます。

この後、要塞島に上陸ですが、二人がちゃんとコンビになっているのがおかしいような、当然なような。

エンドロールでそれぞれのプロフィールが出てきますが、ウェーバリーは伯爵の次男で爵位放棄、若い頃はアルコールとアヘン中毒だったと(シャーロック・ホームズか)。あと、もちろんMI5で働いていました。イリヤは柔道四段で情緒不安定、ソロは五カ国語がしゃべれるらしいんですが、その一つが日本語になっています。二人で日本に行こう。講道館があるよ! ギャビーは「ロシア語習得中」となっていて、そんな細かい萌えをここに仕込んでどうする、みたいな。

シーン⑫

道なき道をカーチェイス。イリヤがバイクで、ソロが……何だろう、あの妙な車?
とりあえず、ギャビーが吹っ飛ばされたバイクに向かって「イリヤ!」と、声を限りに叫んでくれたので満足です。もちろん、後で「ソロ!」とも叫んでますけど。

接近戦でアレグザンダーを倒したのはイリヤ。スローモーションは漫画『あずみ』を思い出しました。スペツナズ?

イリヤはここでもギャビーに「もう、大丈夫だ」と微笑んでます。それに、チラッとしか映りませんが、毛布にくるまってヘリの前にいるとき、彼女の肩に手を当てている。過保護?

イリヤは朦朧としながらも大型バイクを放り投げていた。何、その怪力? 一応、「ザ・キス」とかいう技が使えるくらいなので、自分自身の気をコントロールするとか、火事場の馬鹿力的なものを意図的に出せるのかもしれません。

シーン⑬

クライマックスはすっ飛ばしまして(ウェーバリーの「命中した。(うむ)」みたいな顔が好きです)、最後の荷づくりの場面。

「ごめんなさい」と、意外に素直にあやまるギャビー。「教えてあげたかったけど」と、しおらしく出られたら許さずにはいられません。「俺が君なら同じことをした」、それはどうか分かりませんが、まあ、確かに。
ギャビーは「もう二度と会えないかも」と、盗聴器入りの婚約指輪を返そうとしますが、「記念品に持っておけ」と。「君を追跡できる」
そして……ここのポーターはウェーバリーの回し者なのか?!(ありえないとは言い切れないのが怖い)

でも、これでいいのかもね。どう考えてもうまくいく相手じゃないし。MI6とCIAならまだあると思うんですが、KGBだとお互いの組織で二重スパイ扱いされることになりそうです。60年代のソ連なんてシャレにならない。よくてラーゲリ、スパイ容疑がかかったら銃殺ですね……。

えー、ここまで、主人公のソロのことを書かなさすぎたのですが、次のシーンは、映画の中で一番好きです。
それぞれ、「相手方のスパイを殺してもかまわない」と命令されますが、ソロが鏡越しにイリヤの動きを見ていて、いよいよ決断しなければならない、というときに、一瞬(ああ……)という顔をしますよね。本当は撃ちたくない、というように。
そして、とっさの判断で、自分の心の声に従う道を選ぶ。
CIAという組織(システム)の命令ではなく。
腕時計を放り投げたとき、撃つ気なら撃てたはずなのですが。

冷戦時代は、「アメリカ」「ソ連」といった、巨大で、非人間的な「システム」が今より強力だった時代。いまは当時ほどではないものの、「システムのなかで個人としていかに生きるか」、というのは普遍的なテーマだと思います。この二人は優秀であると同時に、システムの「はみ出し者」的な部分があって、その葛藤がキャラクターとしての魅力になってます。

ウェーバリーの「焚き火で暖まり……」に、心が温まりました。
ご都合主義かもしれないけど、後味がいいのがいちばん。

707号室、物を壊しすぎでしょ(レスリングのときも壊してた)

ソロが「好きな飲み物を飲め」と言ったのは、ヴィクトリアの手口を真似たんですよね? でも、イリヤは上の空で口をつけなかった。

イリヤがソロを「お前は三流のスパイだ」と評しますが、一般的な見方では、ソロのほうが万能な実力があると思われます。まあ、ロシア人はその突っ込みどころがいいんだけど。「尖った靴を履け」は、次の任務はもっとおしゃれが要求される、ということですよね。エンドロールでは、イスタンブールの景色がちょっとだけ映ります(ウェーバリーが水煙管にトライしたりしてる)。続編は、このクオリティだったらまた見てみたいですが……。

しかし、最後まで謎なのは、ギャビーはイリヤのどこが気に入ったのかと。
④で、あんな複雑かつ積極的なアピールをしているということは、その前のどこかで惚れる場面があったはずなんですが、長時間一緒に過ごしたのは③くらいしかない。まさか、あのスペイン広場の階段についての珍妙な会話が?! 女心は分かりませんな……母性本能を刺激されたんでしょうか。

まあ、誰が誰を好きになるかなんて、分からないものですが。

女性は意識しなくても相手の体臭で相性のよしあしを嗅ぎ分けるという説があるので、ひょっとすると、すごくいい匂いを感じ取ったのかもしれません。そうでなきゃレスリングとか、自分の脚を触らせるとか、普通、ないような気がします。何という幸運な男なのか……それなのに何ら成果なしとはどういうことだ(そこがいいんだけど)。

台詞など、全部、記憶から書いているので、DVDが発売されたら、すぐではないかもしれないけど、もう一度見て、間違った部分を修正します。

おしまい(^人^)



4/3追記)

DVD発売記念に、ギャビーを描いてみました^^

あと、昔の「007」シリーズ(ショーン・コネリーとかロジャー・ムーアとか)を見たら、思うことがあったので、こちらに感想を書きました。

もう少し小悪魔っぽく描きたかったなー?