///ベクデルテストの話など

ベクデルテストの話など


石の写真を撮っていないので、最近読んだ記事の感想など。
先週のAERAは、ジブリの鈴木敏夫さんが編集長で、テーマは「日本はどうなる? 理想を失わない現実主義」、いい号でした。

ところで、鈴木さんは『アナ雪』の快進撃を評して、「みんな日本に幻滅しているからうんぬん」と書いておられました。
うーん、そういう見方もあるかもしれないけど、私はただもう、あの「歌」が勝因ではと思ったりします。

私は映画館で観たのですが、正直に言うとストーリーは全然心にひっかからず……飛行機の座席で見るくらいで十分だったかなと。

でも予告編で見た、あの歌のシーンだけは、破壊力ばつぐんでした。数日、頭の中をぐるぐるしてました。ただ、まあ、いい歌なんだけど、街中であれがリピートで流れていると、だんだん疲れますが。

そんな中、読んだこの記事に爆笑!!
「アナと雪の女王」のクリストフはなぜ業者扱いなのか? 夏野剛×黒瀬陽平×東浩紀の3氏が男性視点で新解釈

「ひどすぎる(笑)」と思う部分もありますが、

東: 氷職人はイノベーションが起きて、業界ごとなくなってる(笑)
夏野: オープニングではあんな格好良くやってるのに。なんか音楽業界みたい。

など、お腹がよじれるほど笑いました。
私も、クライマックスで、クリストフがぬぼーっと立ってるのを見たとき、「これはw」って思ったんです。あのときは、姉妹愛を描きたいんだからしょうがないよね、って深く考えなかったんですが。

上の対談を読んで書かれた記事も、興味深く読みました。
新しい「男の物語」が求められている(狐の王国)


エルサは魅力的なキャラですが、それに匹敵する男性キャラが、作中に影も形もないのは確かです。
もし出てくるとしたらどんな男性キャラなのかと考えても、うまく想像できないんですよね。
これまでのように悪をバッタバッタなぎ倒す無敵のヒーローを出せば、エルサとつり合いがとれるかというと、そうとも思えないし。つまり、ディズニーもいろいろ考えて、ああいう話になったんだろうな~と。

上の記事で知った、コリン・ストークス講演が、とてもよかったです!

(動画は右下のプルダウンで日本語字幕が出ます)

ここに、映画での女性の「扱われ方」をテストする、「ベクデルテスト」の話が出てくるんですが、

1. ふたり以上の名前のついた女性が登場するか 
2. 女性同士が直接会話をするか 
3. その会話の内容が男性以外のことであるか
映画に登場する女性の「扱われ方」を重要視するその理由 ※1)

もちろん、『アナ雪』は余裕でテストをパスしています。
でも……あれっ!? これ難しい!
ためしに、小説講座で自分が書いた話を考えてみたんですが、Kindleで出した『わーくしょっぷ』1も2も、そして、この秋に出す3のために書いたものも、全部当てはまってない! あははは。短編だからというのもあるだろうけど、これはよく考えてみないと……。

女性を物語上でモノっぽく扱うとこのテストに通らないのだろうか。
つまり、男性キャラとの絡みだけで登場する女性(私にはこれが多い気がする)、紅一点、添え物など。
もちろん、テストを気にしすぎるより楽しい作品を、という※1の記事の結びには同意するけど……。

ちなみに、ハリウッドでこのテストをパスする映画はとても少ないらしいです。

コリン・ストークスは、アメリカで5人に1人の女性が性的暴行の被害者であるというNYタイムス掲載の統計をあげ、映画が原因ではないとしつつも、自分の子どもたちが「映画から何かを学んで」いる様子を目にしてきたので、

男たちは何者なんでしょう?
何を学んできたのでしょう?
何を学び損ねてきたのでしょう?

(典型的なハリウッド映画から)
男性のヒーローの役割が、暴力で悪者を倒すことだと学んできたのでしょうか?
そして、その報酬に、友達がいない無口の女性を得ること。
そんなことを学んできたのでしょうか?

私たち父親が息子たちに
新たな男の定義を教えなければなりません。

すでに男の定義はひっくり返されてきています。
介護者や勤労者の役割が 変わってきていますよね。
ひどい状況になっていますよね。

だからこそ息子たちは新しい人間関係を身に付ける必要があります。
父親が息子の手本となって教えなければいけません。

真の男性は女性を信頼し尊敬すること、
女性とチームを組むこと、
女性をいじめる男たちの前に立ち向かう男性であること。

これを父親は息子たちに示さなければいけないのです。
映画が男の子に教えること(コリン・ストークス)

これを読んで、なぜエルサに匹敵する魅力的な男性キャラがそう簡単に出てこないのか、分かった気がしました。(ごめんよ、クリストフ)

ストークス氏は、「協力することの大切さ、女性を尊敬することが、悪者を打ち負かすことと同様に、男らしいことであるという、ポジティブなメッセージを伝える映画」がもっと必要だと言っています。

近い将来、ディズニーもそういうのを作ってくるんじゃないかと思います。ディズニーの製作陣はかなり頭がいいと思うので(アメリカの組織は上に行くほどちゃんと頭がキレる人が出てくる、日本と逆)。『アナ雪』でもあれだけさまざまに解釈できるものを詰め込んできたわけですし。

「ありのーままでー」の歌詞の話も書きたかったのですが、長くなったのでまた今度。
単に、マイノリティーがカミングアウトして……っていう歌詞じゃないと思います。

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