///まぶしい少年少女たちと薄汚れた東京と『天気の子』①
『天気の子』感想用凪くん

まぶしい少年少女たちと薄汚れた東京と『天気の子』①

はい、『天気の子』見ました~。ピュアすぎて、まぶしすぎて、もはや狂ってる少年少女たち! 空きれーい! 東京の景色きれーい! イケメン小学生! ……という、それだけではない、なかなかの「問題作」だと感じました。テンポの良さなど、エンターテイメントとしても一流です。しかし、新海監督の、「キラキラ恋愛ヒットメーカー♪」という安直な評価を全力で投げ捨て、前に進もうとする意思を感じました。よかったです。

ここから下、全部ネタバレてますので、お気をつけくださいね。

天気の子ポスター

 

『天気の子』感想目次

・まぶしすぎる少年少女たちは、「同志」

・二人を阻むものがリアルすぎて大人は泣いてしまう、つらい
・大人は実は悪くない
・東京は息苦しくない (以上二ページ目)

・問題作の部分その1 貧富の格差
・問題作の部分その2 東京を水没させた(笑)
・問題作の部分その3 世界を悪くしてまでも大事な人を選ぶ、という選択
・とてもローカルで、ドメスティックな話
・すごく細かいこと (以上三ページ目)

まぶしすぎる少年少女たちは、「同志」

青と水色がまぶしいポスター。この映画に出てくる少年少女たちにぴったりの色。
十六歳の家出少年帆高と、祈るだけで天候を変える力を持つ陽菜とが出会う物語。

インタビューで、新海監督「憧れのまま走り始め、そのままずっと遠い場所まで駆け抜けていく」少年少女たちが描きたかった、と言ってました。
スマホのバッテリーが10パーセントを切ったとき、「やばっ」となって動けなくなる大人ではなく、0パーセントになるまで全力疾走してしまう少年少女たち。

それでいうなら、帆高も陽菜も全力疾走で、そして、ある意味、狂っている。

家出少年の帆高は、偶然拾ったとはいえ銃を所持し、あろうことか一発撃っていて、警察に追われている。陽菜は、シングルマザーの母親が死んでから小学生の弟との二人暮らしで、行政に問題視されている。「私たち、誰にも迷惑かけていません!」 確かにそうだけど、警察も行政もお仕事なんだから! だけど、こんなことを考えたのは一晩寝てからで、映画を見ている間は二人の中に入り込んで、感情移入して、途中からずっと涙が出ていた。二人とも、あまりにも若くて、まっすぐで。

逆に言えば、映画に入り込めなかった人は、そういう「大人の正しさ」が気になるのだろうと思う。でも、新海監督はやはりインタビューで、教科書のような正しい映画を作りたいとは思わなかった、と言っているので、きっとそうだろうなと。

話のつじつまを気にする人もいると思う。天候を左右できる人間、という設定は、『君の名は。』の入れ替わりに比べたら、ずっとありうる(実際、雨乞いなんか現代でも行われるんだし)、マイルドな設定だと思うけど、「なぜ?」と、考え始めると細かいツッコミどころはある。
しかし、ジブリの鈴木さんの言葉じゃないけど、「映画が面白かったら観客は話のつじつまなんて気にしない。話のつじつまが気になるのは、映画に入り込めなかったから」である。そのとおりだと思う。どうしてラストシーン、帆高は鳥居をくぐって陽菜と同じ雲の上に行けたの? 知らんがな。でも、物語としてはそうじゃなきゃいけない!

私が二人の関係性で好きなシーンの一つは、帆高がはじめて陽菜の住むアパートに行ったとき。
チャーハンを作りながら、陽菜が身の上を聞いていく。「何があったの?」。それに対して、帆高が「家出して」「息苦しくて」「でも、絶対戻りたくなくて」と答えていくんだけど、陽菜は豆苗をじょきじょき切ったりしながら、

「そか」

としか言わない。この声がね、すごく好き。相手のこと責めない。社会的な「正しさ」を押しつけない。干渉はしないけど、冷たくはない。

私は、帆高と陽菜の関係は、『君の名は。』の二人のような「運命的な男女」ではなくて、むしろ「同志」だと思っていて。

東京という街で、貧しさと、社会が押しつけてくる正しさに抗う、「仲間」、「同志」

これもインタビューに書いてあったとおり、「あの年頃の少年少女たちの、他者を知りたいという強烈な気持ち」が、二人の結びつきの根本にある。

もちろん、たまたま出会ったから誰でもよかったわけじゃないと思う。帆高は、本気で好きなんだと思う。でも、「好き」にも色々あるでしょ。「憧れなのか、恋なのか」。「今の自分にとって、一番大事な人」、くらいのほうが正しい表現な気がする。純情だしねえ。弟も一緒とはいえ、ラブホに泊まっても絶対に何もないと確信されてるし。

『君の名は。』では「運命の人はいるということを描きたかった」、今回の『天気の子』は「大事な人のために奇跡を起こす瞬間を描きたかった」と、監督はおっしゃってたらしいけど、確かにそのとおり! この二人は『君の名は。』の男女より、青くさいんですよ。若いの。もう一度ポスター見て。若いってこういう色なんだよ(笑)

天気の子ポスター

この「若さ」が、ロマンチックな恋愛を期待する層には「物足りない」という感想を呼び起こすのかもしれない。

でも、意外と、今、本当に若い人たちには、こういう感覚があるんじゃないか、という気もする。今はだんだん、男も女もワンピープル、という時代になってきてるから。男女で友だちにもなれるし、男同士・女同士のカップルもあり。異性だからって、あまりそういう目で見ることなしに、人と人として信頼できる、みたいな感覚。よく分からないけど。

続くよ!

『天気の子』感想用凪くん  感想②「二人を阻むものがリアルすぎて大人は泣いてしまう、つらい」