乗るのに勇気がいることは変わりない
「ハッピー」などとそれらしいワードを冠しているがゲテモノである。(『霧中スプリング』)
ハイいきなり引用から入りました(自作じゃないよ!)
3/19追記)作者の笹原さんより、ハッピーデムオの水玉モチーフのモデルは、日産が限定販売した「みずたマーチ」であるとの情報を得ました。知らなかった! だから「ハッピー」なのか。見ると幸せになれる車を目指したのに、残念なデコレーションになっちゃったってことか。
というわけで、水玉をおっきくしました。
「わーくしょっぷ4」宣伝記事のその2です。その1はこちら~
自作以外を紹介しようと思います。とくに文章が好きな笹原祥太郎さんの『霧中スプリング』は、がっつり引用させてください。今回、楽天Koboの利用者が未知数で、大してダウンロードされない予感もあるにはあるんですが(正直……)それでこの文章がうもれてしまうとしたらさびしいです。だって面白いんだもん。
ランディング・ページから、楽天Kobo(3月末まで無料)、その他の配布サイトに飛べます。ページ内で立ち読みも可能。Kindleは有料(100円)。
【収録作品】
笹原祥太郎「霧中スプリング」
楢野葉 「ゴーン・アウェイ」
これこ 「To cross a line」
山田宗太朗「酒をすてる」
晴海まどか「第2ボタン・リバース」
初めて私の作品を読みたいといわれる方、プログラマーのみなさまは、むしろ、この第一弾をお読みください! 2年前に書いた作品を勧めるのもどうかとは思いますが。
作品紹介(というかほぼ「霧中スプリング」 の感想)
小説は、「起承転結のストーリーがあるもの」と漠然と思っている方も多いのでは。
しかし、小説の形は、千差万別。
最近読んだ中勘助『島守』は、主人公が何もせず、野尻湖でスローライフな生活を送るだけの小説ですが、自然に近い世界に何ともいえず癒されました。
また、「文章だけで(も)楽しめる小説」というものが、この世にはあります。
そういう小説は案外少ないので、今回、笹原さんのこの一編が入っていて嬉しいです。
とにかく、私は笹原さんのような文章は書けない、と思った。
主人公たちが温泉街に到着したときの風景。
冒頭付近の何気ない文章ですが、「フレッシュなムード」「実際に必要かどうか」が、ツボでした。
またほんと、観光地は日本全国、小じゃれた、女子向けっぽい感じになってきてますもんねえ。
一応ストーリーは、「まじめ系くず」(くずといっても悪人ではないらしい)の主人公が、友人で“この星でも指折りの色男”(とは最初、読者は知らないのだが、物語も終盤になってそんな描写が出てくる。こんなおいしい設定がなぜ最初に出てこない)颯介と一緒に草津温泉に行くところから始まります。
男二人は、湯畑の前で美少女サキと出会いますが……しかし、作者自身、「内容という内容もない感じを楽しんでいただければ」と書いている通り、何かが起こるようで起こりません。
きちんとしたストーリーやオチを期待して読むと、「で、結局、何なの?」となってしまうかと思うので(失礼……あと「ググールグラスは何だったの?」とか)読むところはそこじゃない、と言いたいです。
こういう会話文も好き。
「嫌に決まってるじゃない」(『霧中スプリング』)
「ぁ行くぞぇ」(笑)
文章のノリが独特で、つい読み進めてしまいます。が、ときどきまったく意味が分からないことも。「差を見せつけられた俺はメロンを前にした吹き出物。」って何だろう? まあ、いいか。多分「まあ、いいか」って思いながら読めばいいんだと思います(えっ)。
途中から車の話が出てきますが、楽しく読みました。
ハッピーデムオはともかく、デムオは「心が温かくなるいい車」と主人公に言われてます。
アクスラやロードヌターについては、あくまで作中のサキというエキセントリックな一少女の意見ということでご寛容のほど。しかし何でぜんぶマ○ダ?
個人的には、群馬の山中のこのへんのくだりも頷きました。
あー、私たちも昔、伊豆かどこかの山の中で、Uターンできない細いやぶ道をレンタカーで通らなければならなくなって、道は砂利というか、ガレキ道。石が飛んだかして傷がつき(?)、抗弁したんですが、レンタカー屋からウン万円請求されたのを思い出しました。
あれ以来、レンタカーで荒れ道は気をつけています……。
引用しているときりがないのでこのへんで。
「煙雨」の話も、運転する人だと分かるんじゃないかな。
と、ここまででもし興味がでてきたら、是非ダウンロードしてみてくださいね。
Kindleは有料ですけど、文庫本換算236ページだし、100円なら投げ銭だと思って(笑顔)。
その他の作品紹介に行きます。
これこさん『To cross a line』、カラスとのら猫と少女……ほのぼの、メルヘンな要素が満載なのに、なぜか底に流れる不気味さを感じます。これがこの人の持ち味です。前作より、ややおとぎ話っぽい雰囲気になっていると思います。
山田さん『酒をすてる』、ビール担当だった山田さんですが、飽きてしまったようです。作中でどんどん酒を捨てています。しかし、物語としてきちんと伏線を回収し、構成も工夫されていて、さすが。一人称の文章は書きこなれていてすらすらと読めるし上手い。私は、前作を読んで一人称にあこがれたんですが、自分で書いてみると難しいですねー。
個人的に今回『霧中スプリング』と同じくらい好きなのが、晴海さん『第2ボタン・リバース』。笹原さんとはまったく方向性が違って、構成力、文章力を総合した完成度の高さが魅力です。
読み進めるうちに、一度、二度、「え?」とそれまでの物の見方が転換する箇所があり、新鮮に感じます。私は前作(「はーべすと」内の『幽霊の引っ越し』)で幽霊を出したんですが、それがごく平凡な幽霊像だとしたら、この作品のほうは……! あんまり書くとネタバレになってしまうのでやめますが、最後のどんでん返し(?)をぜひお楽しみください。
いつもより「軽くない」文章を目指した、と書かれているとおり、冒頭の教室の描写なども、何気ないのですが、文章に密度があって私は好きです。
自作の言いわけ
今回、私は「できるだけ軽い」文章を目指しました。あと「一人称」。
しかし、どちらも難しかったです。
自分でもイマイチ納得がいきませんが、これが実力なんだな、と思っています。
この「わーくしょっぷ」シリーズは、一作目以外、その時期に思ったことが反映されていますが、今回も2014年の秋から冬に考えていたことがベースになっています。しかし、それをストレートに出せばいいというものでもないのでしょう。最近、これからどうしたいのか、自分はどういう方向性で行くのか、考えています。
次は、表紙とイラストの話を書こうと思います。
色々反省点もありますが、いつも楽しく描かせてもらっています、ありがとう!