ガンダム知識ゼロで『閃光のハサウェイ』見たらこんな感じだったよ、というだけの感想(笑)。ま、シリーズ「初見」って一度しか味わえないものですし。
見ることにした理由
思い返してみたら、三つありました。
①しくみとは!?
予告編の台詞、「このしくみの深さを破壊する方法を……」が、当時柄谷行人『世界史の構造』を読んでいたため、
「しくみ? 資本-国家-ネーションが接合した『近代世界システム』のことか? だとすると、破壊はとても難しい……」
などと、考え込んでしまって(笑)。あと、このときの予告編がいかにもロボットアニメという感じではなく、大人っぽい雰囲気だったのもよかったです。
(正確には破壊はできる。これまで数多くの漫画、アニメに描かれてきた。シ○○ヴァの某パートもそう。資本と国家が破壊された後の世界。
でも今、何とかそうならずに、近代世界システムを乗り越えようとみんながんばってるのであって……)— Yoko (Θωθ) (@naranoyoko) March 24, 2021
②夫がファーストガンダム好き
テレビの再放送が映ったとき、夫が一瞥するなり「これは○○○の回」と食いついていた。単に好きというより、少年時代の世界観を支配していた作品らしい。それで少し興味を持ったが、「もう一度最初から全部見ない?(一緒に)」という夫の誘いは、絵柄が古いし長すぎて無理、と断りました。
③数度の延期
しばらく忘れていたけど、何度目かの延期が決まり、すでに観に行っていたシンエヴァはタイミングよく公開できて興業収入も伸びているのに、何て気の毒な……と思い、一度くらい見に行ってあげるか、となりました。その後、夫にも勧めて同行したので、結局二回観てます。二回目は細かいところがよく分かって面白かったです!
前提となる私のガンダム知識
①ネットにあふれる名言
ネット社会にいるかぎり、ガンダムの名言を目にせずには生きられません……知ってますよいろいろと! 「認めたくないものだな」「お偉いさんにはそれが分からんのです」みたいなやつ(笑)。でも、どういう文脈で語られたのかは不明。アムロとシャアっていう人がいることは知ってます。シャアは赤い色が好きとかも(昔、シャア専用と銘打って赤いノートPCが売られていたので)。ハサウェイのお父さんは、「親父にも殴られたことないのに」の画像から、アムロを殴った人らしい、ということだけは知ってます。なぜ殴ったのかは不明。その他の情報? いや、本当に何も知らないんです。
②夫の抽象的な情報
ガンダムは、あのモビルスーツは細部まですごくリアルに(?)考えられているんだ、みたいなことを熱く語っていました。
あとは、私「何なの、宇宙世紀ってw」夫「人類が宇宙に出ていった時代だよ……」みたいな会話。
一度目に見たときの感想
この作品、新しい視聴者層を開拓したい、という意識を持って作られたのではと思います。ハリウッド映画を目指したような大人っぽい雰囲気がありますし。
ガンダムシリーズまったく初見者の場合、どこまで理解できたか。
最初に感じるのは、世界の空気のようなもの
まず、見惚れるようなリアルさは、初見者にこそ必要なものです(笑)。
話が分からなくても楽しめるのはリアルさ!
南国特有の湿気を含んだ雰囲気、シンガポールみたいな超高級ホテルや植物園……。
シンエヴァも第三村のリアルさがなかったら、単に履修しただけの私はあれほど楽しめなかったと思うんです。『ハサウェイ』の映画前半は自分が東南アジアを旅したときの空気感を思い出してました。とにかく雰囲気がすごかった。
冒頭、ハウンゼンが地上に降下していくシーンも好きです。
唯一、世界観の説明テロップが入るところですが、BGMも荘厳で、オープニング!という感じがしました。
私はあのシーンで、夫の「人類が宇宙に出ていった時代だよ……」という言葉を、頭ではなく心で理解しました! 「あ、人類が宇宙に出ていった時代なんだ……」って(笑)。画面から、向こうの世界の空気がふっと漂ってくるような。
実は、モビルスーツ(MSと訳すのも知らなかった)が出てくる後半も、同じような感慨を味わいました。私はこれまで長い間、「なんでロボットは人型なのかな」と思ってきたんです。パトレイバーなども好きだったけど、「でも、どうして人型なんでしょうね?」という思いがどこかにあった。
ですが、今回あの、多くの人が怖がる市街地戦、それから最後の空中戦をクオリティの高い映像で見て、「ああ、こういう兵器がある世界なのか……なるほど、すごいな……」と、ストンと胸に落ちる納得感がありました。これは、古い絵柄のガンダムを見ても自分には得られなかった感覚だと思います(笑)。
今回のMS戦は夜間戦闘が多く、暗くて機体がよく見えなかったんですが、洋画的なものとして見た私の感想は、あれはあれでよかったと思います。ペーネロペー、すごい形の機体だし、模様とかよく見えていたら「オモチャ感」を感じてしまったかもしれないな、と。
TLで拝見した「ハサウェイが実写映画だったら」のお題(?)でオフショットを描かせてもらいました。レーンくん役の子が元気いっぱいな設定。
ストーリーの理解度
三部作の一作目ということで、ストーリーは単純だったと思います。要するに、ハサウェイがテロを起こすために(?ここの詳細はよく分からず)地上に降りてきて、クスィーGを受け取る、という、ただそれだけの話なんですよね? そこに陽動作戦としての夜襲シーンが挟まってる。そこは、一応は理解できた! イェーイ!
とにかく理解が遅延する!
だけど、初見者って大変で、本当に何も分からないんです。
まずね、クスィーの名前は最後まで聞き取れませんでした。いや、「ク○○ー」とかそんなこと言ってるな、というのは聞こえるんです。でも、頭の中に「クスィー」という単語がないので結びつかない。最後のほうでやっと、あれはハサウェイの機体の名前で、ハサウェイは「ク○○ー、よくぞ一人で……」って愛機を人あつかいしてるんだ(ここ好き)、ということが分かる。それからTwitterを検索してやっと、「クスィーっていうのか。そんなギリシャ文字、生まれて初めて発音したよ」となる。
「空中受領」も「くうちゅうじゅりょう……?」って、音が聞こえても意味がしみ込まなかったけど、見ていくと理解。何しろ、クスィーを受け取りに来てることもよく知らないので。
すべてがこんな調子で、台詞ってしゃべられた後、理解をともなって観客の心にしみ込むまでに時間がかかるんだな、と、身をもって体感しました。ペーネロペーもずっと聞き取れなくて、でも最後にレーンくんが「このペネロペーに乗っているかぎり命は保証する!!」というのが、自信過剰さ具合も相まって、すっと耳に入ってきて、「あ、この機体、これまでずっと、新型がどうのって言われていたやつは、ペネロペーっていう名前だったんだ」と(笑)。その後Twitterを調べて、正式名称「ペーネロペー」じゃん、と(レーンくん、独自発音)。
一番大事なところは、さすがに冒頭から何度も繰り返してありました。マフティーという組織があってテロをやっていて、その名前が長いリーダーがハサウェイくんである、と。だけど、空港のラウンジの場面ではテロの首領ということまでは確信が持てず、その後、運動員と接触したりして「あ、やっぱりそうなの……?」って。
あと、有名な軍人のお父さんがいて、昔MSを盗んで乗り回したことがある、と。お父さんについては、念を入れてマンハンターの親玉(名前は忘れた、マンハンターが何かも分からない)と、ケネスが二回話題にしてくれたのでよかったです。やはり、どうしても視聴者に理解させたい情報は、最低二シーンはいるのかもしれないな、と思いました。
ちなみに、ガウマンの乗ったメッサーが肉弾戦で火花を散らしているのをハサが呆然と見ているシーンも、それが仲間の機体だということが分からなかった(「ガウマンか?」というセリフがあるけど、ガウマンが人名なのかも知らなくて。その前のコックピットでの会話は、BGMが鳴り響いていて聞き逃してる)。
ただ、ハサが無力感に満ちあふれた顔をしているので、無力感のあまりギギちゃんを抱きしめたくなったのかな……と思ってました。十分といえば十分だけど(笑)。
過去作を知らなくても大丈夫……だけど
大丈夫だと思います! 映像だけでも十分楽しめます!! そりゃ「そうだねクェス……」とか言われても何のことか分かりませんよ(笑)。そもそも、シャアの反乱って何に反乱したんだ? でもハサウェイくんが一粒涙をこぼしてるから、きっと辛いことがあったんでしょうね、と。それくらいでも十分楽しめました(笑)。
だけど、このあと話が難しくなったら心配だなあ。
地球の連邦政府は腐敗してるんだな、くらいは今作を見て理解したんですが、ハサウェイくんたちの計画、「要人を殺して全員で地球を出る」でしたっけ? こう書いてみると、ますます「何その計画???」感がつのります……続編で、納得ができるといいなあと思っています。そもそも何が原因で環境汚染が起こったのかも分からなくて(笑)。
二回目はフィルムもらえました~~~よく分からんもの出た!www
(二回目はマフティーメンバーのトークショーつきでした)
二回目に観たときの面白さ
いっぱい見るところがあって面白かったです。
前回の後に、ついったランドを検索して、たくさん知識を得たので(笑)。
前半のハサウェイたちの細かな表情、MS戦の細部など、一回目はほとんど見ていなかった部分が沢山ありました。
ハサウェイくん
前半の声の演じ方、小野賢章さんがトークショーで、表の言動とこれからやろうとしていること(テロ行為)との差があるので難しかった、というようなことをおっしゃっていましたが、本当にそれを感じました。何でもない台詞でも、絶妙な緊張感。
それに、ハサウェイくんはテロについてもちゃんと客観視しているというか、「こんなやり方に未来はない」ということをよく分かってるんですよね。タクシーの運ちゃんの「マフティーは学があって暇なんでしょうよ」とか、「勝手に市街地戦をやっておいてクソテロリストめ」みたいなモブ台詞が効いていて、よかったです。本人はそういうことも分かってるんだけど、でも、進むしかない地点まで来ているのが、この作品なんだな、と。
ハウンゼンの中でケネスに命を救われたとき、「気が付いたら走り出していた」みたいなこと言うじゃないですか。よく考えると、この台詞はハサウェイのキャラクターを表しているのかもしれないな、と。「気が付いたら走り出していて」、そのときの突破力があるから、協力者も組織もできてしまい、今、引き返せない地点まで来てしまったのかな、と。
MSを盗んで乗り回したというのも、ひょっとして昔からそういう性格なんじゃないか、とか(笑)。
「この先はずっと綱渡り」という台詞が切ないです。
選択肢を選べる段階はずっと前に終わっていて、目の前の一本道しか残されていない感じがして。それはたぶん、破滅への道なんだろうなっていうね。
あとは、美人の女の子に弱いんだけど、二十代の男の子だったらまあ理解できるよねー、という感じ。
主人公にしては地味な顔で、会社の同僚とかにいそうなタイプですよね。
ジョリビーでの腰つき、あれは何でしょうね(笑)。
ケネスさん
ハサウェイに秒でウィンクしたり、夕食のポテトを食べちゃったり、ぐいぐい来るじゃん……ギギを口説くのはハサウェイの前でだけ、男同士共通の話題で仲良くなりたい気持ちが強すぎる、おじ……おにいさん。
ギギに「寝よう」ってカフェテリアで大声で言うところ、「ちょっと顔がいいからって、こんなセクハラおやじが宇宙世紀にまだ生き残ってるのかw」と思ったけど、いろいろ苦労してのし上がってきたんだろうな、とも思いました。何なのあの馬w(と思ったら、『逆シャア』のオマージュだそうです)
ギギちゃん
カフェテリアでステーキを食べるシーン、すごく大口じゃないですか? 肉食女子~!
私たちが思うより、ステーキは特権階級の食べ物になってるのかもしれないですよね。牛の飼育って、広大な土地や草を必要とするから。プラントベースの合成肉でなければ、ですが。
ケネスが「ギギ、今何て言った!?」とハサがマフティーではないかと気づくところ、一回目はよく分からなかったんですが、「戦場にいる者はゲンをかつぐ」「(ハサウェイは戦場にいるのに、勝利の女神の)私を避けていた」という会話の流れがあったんですね。ケネス鋭い。
最後にケネスの「面白くなりそうだ」にムッとした顔をしてるのはなぜだろう?
全体的には、女の子として分かりやすいキャラだと思いました(笑)
レーンくん
レーンくんかわいいよね、いろいろと(笑)。
ハサをコンマ秒でチラ見するところや、ガウマンとのコックピット漫才。
最後、コックピットから脱出するとき小型の火器を持って出るところ、リアリティがあってよかったです。市街地戦では、レーンくんだけ街に向かって攻撃をしなかったらしいんですが、見逃したので、もし三回目を見る機会があったら確かめたいです。
ガウマンの枷を切ってライトも持たせてくれるし、いいやつですよね、普通に(笑)。
ガウマン
今作で「ヒロイン」と呼ばれているちょい悪おやじ。cv.ツダケン(Twitterでそっちのほうが有名と知った)。
ダンスフロアの重低音から、ノリノリの大音響で海上を驀進するシーンの切り替え、すごくかっこいい!! 一回目は誰が何しようとしてるのか分からなかったので、ぼんやりと「今のシーン、かっこよかったような……?」と思っただけだけど、二回目に見るとすごくかっこいい!!
ガウマン以外の人たちも、昔のキャラデザとの比較を見たけど、今作のほうが圧倒的にいい(というか、現代的)。キャラデザにも時代の流行があるんだなあ、と思いました。ツイを見てたら爆笑したので、ガウマンボールペンが欲しくなりました。使い道ないけど。
クスィー
みんな言ってるけど、ポットから手が「ガシッ」と出てくるところ、かっこいいですよね。
クスィーとペーネロペーの乗り手の戦闘スキルの差も、ついった解説があって(ミサイルの使い分けなど)「な~るほど~!」と思ったので、これも三回目があれば(略)
あ、あと、小野さんが言っていた「盾で防ぎながら<キュッ>と銃を構える」ポーズも見逃してしまいました。これも(略)
今後の目標
古いガンダムを見直すつもりは今のところありません(笑)
『逆襲のシャア』だけは一度履修してもいいけど。
とにかく、ハサウェイの最後(最期?)を、ネタバレを踏むことなしに完結まで見届けられるといいなあと思います。たぶん、あまり明るい未来でないことは予想がつきますので……小説が何十年前に出ていることは知ってますが、全部見終わってから読むなら読みます。
ということで、ネタバレ禁止! 絶対!! Wikipediaには近寄らない!!
おしまいです(*^-^*)
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ガンダム知識の前提の無い方に『閃光のハサウェイ』はどう映るのか、興味があったので読ませて頂きましたが、楽しまれたようでよかったです 作品にそれだけの力があるのも嬉しいことです
ガンダムファンとしてはそれまでの作品は全部観なさい、見なければ人生の損失です、と迷惑な布教勧誘をしたいのはやまやまですが ご夫婦の会話に余計なものを持ち込みそうですね
ちょっと気になったのが「絵柄が古いし」という点でした 私は映画ファンで昔の映画もよく見ます 戦前のものから、映画が発明されて間もない無声映画の頃のものも それらの名作を見ると今の映画より新鮮で驚くことがあります ”映像”は古くても“画面”に力があるからです
ですからガンダムはともかく、古い印象の作品でも遠ざけるのは勿体ない、と思いコメントした次第です アニメでもディズニーの『ファンタジア』は戦前の作品ながら今の作品より美しいくらいですし
なお環境汚染の原因は今の私たちです 今のまま温暖化や砂漠化が進んで人口は増えて、多くの人が宇宙コロニーへの移民を強制される時代 これくらいはネタバレでなく知っておいた方が理解しやすいでしょう ならば一部の特権階級が地球の富を独占するのではなく、すべての人類は地球を出て重力を離れた“宇宙人”になる時だ、地球は何百年もかけて自然回復させようというのが過去にあった“反乱”です
その顛末を描いた『逆襲のシャア』は見ていないと全く違うので絵柄が古くても一見をお勧めします (古いと言っても今も繰り返し放送される『風の谷のナウシカ』よりずっと後の映画なんですけど)また、第2部は先の話になりそうなので物足りないなら『機動戦士ガンダムUC』が近年のもので同じ硬質感がある事も申し添えておきます
長々と失礼しました